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行政書士山口のブログ11 笑う相続人
病院に入院されていた奥さんが亡くなりました。
癌と宣告されてから、ほんの数か月のことでした。
この奥さんは、まだ、60歳になったばかりで、
数歳年上のご主人と、これから、
持ち家のこの部分はリフォームしてもらおうとか、
思い出の場所に、また二人で旅行をしようとかと、
いつも、仲良く語り合っていました。
まだ、先は長いと思っていたので、
死後のことなどは、ほとんど考えてもみませんでした。
しかし、癌と宣告され、入院してしまうと、
あっという間に、「その時」が来てしまいました。
そして、奥さんが亡くなり、49日が過ぎると、
懸命に長年、コツコツと働いてきた奥さんが、
その名義で持っていた財産の
相続問題が顕在化してきます。
このご夫婦には、お子さんがなく、奥さんのご両親や、
祖父母も、他界されており、相続人として存在しているのは、
ご主人のほか、奥さんの姉と弟でした。
この弟は、自分たちのご両親が亡くなったときも、
男の子供としては、ただ一人だったこともあり、
事実上、不動産や預貯金などの財産を、
ほとんど独り占めのような形で、相続していました。
そして、この弟は、元々、横暴な振る舞いが多く、
不動産などを相続させられたから、
税金の支払が大変だと言ったり、
その弟の家の増築で、本件のご夫婦が、
お祝いに高価な家電を贈っても、お礼の一つもない
というような状態でした。
奥さんの49日後、この弟が、親族の集まりのとき、
ご主人に、まず言ったことは、
生命保険金はいくらかけてあり、
保険会社からいくらもらえるのか、でした。
自分は弟で相続人のはずだが、
どれくらい財産があるのか「正確」にわからなければ、
遺産分割協議書に印鑑の押しようがないというのです。
亡くなった人の相続人が、兄弟姉妹の場合は、
遺留分(法律上確保された一定の財産)がないので、
奥さんが、遺言さえ書いておけば、
その弟にビタ一文も渡す必要がなかったのですが、
もう入院してしまった以上、遺言などは書けないと
ご主人も思ってしまっていたそうです。
この弟は、結局、法定相続分として、
濡れ手に粟の、何百万円もの現金を、
遺産分割協議書の押印と引き換えに取得し、
これから以後は、もう、
自分にお歳暮などはいらないからと
笑いを浮かべて帰ったそうです。
公正証書遺言など遺言は、作成時点で、
一定の判断能力さえあれば、
きちんと作成することができます。
自分だけで判断してしまわないことが必要です。