行政書士山口のブログ13 忘恩行為
ある相談者から聞いた話です。
ある方が、近所に住んでいましたが、
その方には子がいませんでした。
その方は、近くに住む、遠い血縁の青年に、
常日頃から、あれこれとなく、
ずっと、様々な面倒を見てきてあげていました。
他方、その青年も、その方の老後は、
自分が面倒を見ると言っていたのだそうです。
そこで、その方は、その青年に、
自分が持っていた不動産を、全部、贈与する契約をし、
登記名義も移転したのです。
しかし、その青年は、その後、家庭を持つと、
段々、疎遠となり、
その方が、身体が弱ってきて援助を必要とする頃には、
顔も見せないような状況になっていました。
その方が、贈与した相手方に自分の窮状を伝えても、
暖かい返事は帰ってきませんでした。
後悔しても、後の祭りでした。
このような忘恩行為の場合、いろいろと考えることができます。
例えば、贈与の撤回です。
しかし、この場合は、
登記移転がなされ、贈与が履行されていますので、
撤回は、原則的には難しいことになります。
例外的に、
忘恩行為を理由として、贈与の撤回が認められる余地があるとしても、
例外ですから、撤回が認められる要件は、
かなり厳しいことになるでしょう。
それまでが、
面倒を見てくれると言っていたとか、
相手と良好な関係だった、としても、
それは過去の話です。
安易に、生前贈与という形を取るのではなく、
遺言という形を取るとか、贈与に負担を付けておくとか、
後になって後悔することのないような、
しっかりとした方策を、あらかじめ取っておくことが
適切といえるでしょう。